今後の日本リメディアル教育学会の活動について
日本の多くの大学が、新入生に対して中等教育の学習内容の学び直し教育を実施するようになっている。高等学校で未履修科目をもつなど、大学教育に求められる基礎的な学力に問題を抱える学生が増えてきたためである。
また大学入試多様化の結果、入学決定時期の早期化が進み、入学前の準備教育を提供する大学も増加している。
このような状況のなかで、新入生の学力内容の把握方法、課題を抱える学生の学力の分析方法、さらには効果的な学習指導方法などの開発・普及を目的として、2005年3月に日本リメディアル教育学会(The Japan Association for Developmental Education)が設立され、実践的あるいは理論的な研究活動が活発に行われてきた。
研究の進展とともに、学生たちの学力構造や資質の変化などの分析も進み、大学における学び直し教育の役割が広範囲にわたることが確認されてきた。基礎学力の養成やコミュニケーション能力あるいは学習意欲の育成など、学部教育の初期段階から始まる学習支援の方法全般にわたる研究が求められるようになっている。ユニバーサル段階に達した日本の大学教育には多様な教育ニーズがあり、教員と職員が協働して応えなければならない課題が山積している。
会員による実践報告と理論面の研究は、研究大会および学会誌などに発表され着実に蓄積されつつある。本会は当面、以下のような目標を設定し、教育及び支援の内容・方法、さらにそれらの成果の検証に関わる研究活動を推進していく。
(1) 各大学が実施している入学者の学力把握、学び直し教育についてのデータの収集と整理。またその適切な調査方法の研究。
(2) 学力的に課題をもつ学生について、その原因の究明を進めるとともに、課題をもつ学生が入学前あるいは入学後の初期段階で、いわゆる学習習慣を身に付けて大学教育に適応するように支援する方法の研究開発。
(3) 大学における課題発見、課題解決のための学習方法、つまり自ら進んで学習する自律した学習者としての学生を育てるための支援方法の研究開発。
(4) 学生が授業内容を確実に理解し、積極的に授業に参加し、大学教育の提供する専門的知識・技術を習得し、いわゆる学士力を獲得するための学習支援方法の研究開発。
(5) 社会に有用な人材として活動するための社会人基礎力および生涯学習に必要な基礎的能力を、学生が学部教育修了までに習得するための支援方法の研究開発。
なお以上の方向性を踏まえ、大学教育および中等教育と大学教育の接続に関する研究を進めている団体・個人との建設的な協力関係の構築に努め、大学教育の改善と発展に寄与する研究成果を提供することに努めるものとする。また学会活動のいっそうの活性化を図るため、委員会組織や諸部会の構成などを不断に見直していく。