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原稿執筆ガイドライン

2011年9月2日  日本リメディアル教育学会 編集委員会

 このガイドラインは,投稿した原稿が掲載否とならないため,あるいは,執筆者が原稿を書きやすくするために留意すべき注意点を示したいという意図から, 作成された。本会の会員の専門性は多岐にわたっているため,研究分野によっては,本ガイドラインの運用について,一律的な扱いや解釈が困難な場合も予想される。 しかし,ここに述べることは,本誌の読者(編集委員や査読者を含む)として多数を占める理工学系,教育心理系,言語教育系などの研究者がよく用いる手法や 考え方について書かれているため,投稿を通じて研究成果を報告したいと考えている著者すべてにとって参考となる情報が含まれていると考えられる。
 以下では,原稿,特にその代表的なものとして「論文」を例に挙げているが,「研究ノート」,「実践報告」などについても基本は同様である1-10)。 また,「解説」等に代表される依頼原稿(「解説」等は投稿も可能である)についても,ここで述べる内容は文章を執筆する上で参考にしてほしい。

1.論文を執筆する際の注意点

 論文を書く際には,事実と意見は区別して書かなければならない。 また,論文では,読者に正確に情報を伝え,文章に説得力のあることが必要であるが,そのためには自分の意見をデータでサポートさせたり, 効果的な文章や図表での表現を工夫したりすることが重要である。
 そのような論文を作成する手段の一例を示すと,自分の考察や主張に説得性を持たせるために必要なデータとは何かを最初に考え, そのデータを収集することからはじめるという方法がある。この場合,自分の主張に都合の悪いデータが出てくることもあるが, それを無視したりせず,きちんと考察を加えることが,正直性が必要とされる学術論文では必要なことである。  
 また,そのような場合,論文の流れは, \莵垳Φ罎篳幻イ鯆敢困靴弔帖ぬ簑蠅砲覆辰討い訶世簔輒椶垢覺囘世覆匹鯆鶺する, △修量簑蠅魏魴茲垢襪燭瓩良要なデータや注目している観点についての独自の解釈などに関して,その条件・方法・手段など(研究の方法や手続き)を説明する, さまざまな観点から,データの解釈や考察をおこない,議論を展開する, ぐ幣紊瞭睛討亡悗靴董い泙箸瓩鬚こなう, ド要に応じて,その分野における研究の今後の課題や,その研究結果から得られる日本の社会または教育界に対する示唆を書く というものになる。
 特に,教育実践的な内容を原稿にする場合に注意すべきことは,主観的な経験談に終始しないということである。当該実践の位置づけを明確にし, 信頼できる手続きによって得られた結果であることや,結果自体に再現性や客観性を持たせることが必要である。
 また,原稿が「論文」として認められる条件には,たとえば,個人や社会に貢献するものであること,未解決の問題に取り組んでその結果を他者に知らせるものであること, 新しい問題を取り上げていること,などがある。どういった条件が必要とされるかには,研究分野によって多少の相違があるが, いずれの場合にも,少なくとも「問題提起があること」はあらゆる分野を通じて必要である。また,ここでいう「貢献」が,具体的に,手段・方法の提案や, 結果そのものに新規性や独自性,一般性があることを指す場合もある。あるいは,今後の教育や学術の発展に何かしら寄与をする内容となっていることが求められる場合もある。 さまざまな分野の研究者が集まっている本会の会誌に論文を投稿するにあたっては,こういったことを念頭に置いて執筆することによって, 原稿が採択されやすくなると考えられるので,参考にしていただきたい。
 以下には,データ解析を主な研究手段とする論文の代表的な執筆スタイルについて解説する。 なお,以下に述べるような定型的な執筆スタイルがないような執筆方法もあるが,これについては割愛する。

2.構想を練る

 (1)収集した個々のデータの解析結果や各データを加工・統合して導かれる
  情報によって,どんな結論が導きだせるのか,何が言えるのかを考える。
 (2)上記(1)で考えた自分の結論や主張を読者に理解できるように,図表に
  よる表現の仕方やデータ解釈の記述の仕方を決める。
 (3)図表から結論にいたるまでの論理に客観性・一般性や一貫性のある論文
  の内容の流れを考える。

3.文章のスタイル

 (1)事実と意見の記述
   事実(データ)と意見を区別して書く。事実は,データに基づいた客観的な
  記述を心がける。意見は,データの解釈やその解釈に基づいた判断を自分
  の言葉で述べる。
 (2)論理的な文章
   適切な接続詞の使用を心がけ,論文全体が論理的な流れ(首尾一貫性)
  のあるものにする。
   また,論理の流れに合わないが,補足的に記述したい情報がある場合は,
  無理に本文に入れるのではなく,末尾の注として別に記述する。
   段落が変わる場合は,改行するように心がける。
 (3)文の短文化(単文化)
   文意を明確にするため,論述においては,できるだけ一文を短くする。たと
  えば,「〜であるが,〜でもあり,〜である。」のように文をつなぎ,長文(重文,
  複文)で書く論文が散見される。このような書き方は円滑な理解を妨げるので,
  「〜である。しかし,〜でもある。したがって,〜である。」と接続詞を使って短
  文(単文)で表現することが望ましい。
   なお,文を短文化するには,無用な修飾語を避けることも効果的である。
  どうしても長文にならざるを得ない場合は,文章の構造に注意する。重複した
  表現は必要最小限にとどめ,内容のまとまりを持たせる。
 (4)適切な表現の使用
   論文としての表現の適切さに留意すること。たとえば,話し言葉,何を指す
  のか分からない代名詞の使用などは避ける。また,本文中に体言止を用いる
  ことは,できるかぎり避ける。
 (5)適切な用語の使用
   定義の明確な用語を用いた記述を心がける。一般的でない用語や共通の
  定義が前提とならない用語については,必ず論文中で定義を明らかにして
  から使用する。
   略語を用いる際,その略語が初出の場合は,その略語の意味または略さ
  ない場合の表記(括弧付けや注)をつける。一般的な略語がない場合は,日
  本語として無理がない略語の使用を心がける。
 (6)日本語と外国語の混在の回避
   すでに定着した訳語があり,また適切な日本語で表現できるものをわざわ
  ざ外国語で記載しない。また,訳語やカタカナ表記については,同一論文内
  では統一した表現を使用する。外国語の符号,たとえば,?,!,“”(ダブル
  クォーテーションマーク)などは,基本的に使用しない。
 (7)その他
   正しい文法・語法で書かれているかどうか点検する。たとえば,主語と述語
  の不対応などの文のねじれ,時制,修飾語句などの点検である。また,差別
  や偏見と受け取られる記述についても確認する。これらは,論文作成時には
  気づかないことが多い。
   見出しが,段の最下部に来ないようにする。その場合は,敢えて次の段(ペ
  ージ)に送る。
   新しい段落の先頭は一字下げる。逆に,図表が段の最下部に来る際,本文
  の途中(行末に改行を挿入するような場合)から次の段や次のページに本文
  が継続すると,自動的に一字下がっていることがある。本文をよく読み返し,
  このような場合についてはそうならないように修正する。
   執筆要項を兼ねた割付見本を熟読して理解を深めるとともに,時間をおい
  て読み直す,他者に読んでもらうなど,文章を推敲する時間を十分にとること
  も重要である。

4.良い題目(主題目,副題目)の付け方

 題目は,読者が中身を想像できるように,論文の内容を適切に集約したものと
する。 原則として,研究対象,研究仮説,研究の手法,研究結果などの情報を
含むようにする。 その際は,適切な情報量の提示となるよう留意する。例えば,
わざと情報を伏せて含意を持たせることはしない。 また,情報が欠乏したり,過
剰になったりしてもいけない。 これらの配慮によって定まった題目によって,論文
内容が限定できることが望ましい。

5.序論で書くべきこと

 当該論文の目的や意義を,明確に記述する。 先行する研究や同種の研究と
の違いも明確にしておく。
 どういう問題や課題があるのか,どうしてその問題・課題に取り組むのか,そ
の問題解決や課題の明確化や新たな提案のために,どうするのかを説明する。
取り組んでいることに学術的な意義や価値があることを,過去や他者の成果を
調査して,読者を納得させる。 そのことが,さらに上位の問題解決や課題の提
案につながることを述べるか,またはそのこと自体に意義があることを強調する。

6.方法・手段・材料などの部分で書くべきこと

 研究・実験・調査などの方法,対象,材料などについて記述し,それが適切で
あるかどうか,読者が同じ方法で同じ結果を導き出せるかの観点で記述する。
ただし,標準的方法あるいは同一方法を用いた既発表文献がある場合には,
それを引用して記述を簡略化することもできる。
 さらに,得られたデータに関する処理の方法についても記述する。ただし,常
識的な方法(数学的手法など)を適用する場合,その詳細について省略でき,引
用・参考文献を示さなくてかまわない場合もある。 しかし,その方法自体に新規
性がある場合は,その詳細を説明する必要がある。

7.結果や考察の部分で書くべきこと

 結論を導き出すのに必要なデータを吟味し,わかりやすい形で提示する。重要
なデータ,複雑なデータ,多量のデータは図表で示し,それ以外のデータは本文
中に記述する。図表で表現する際には,見やすく,読みやすい表現に努める。軸
ラベルや単位,目盛の配置,軸の種類,プロットの種類など,図を書く基本には
忠実にしたがう。また,数値の羅列だけの表では,説得力が低くなる可能性があ
ることにも注意したい。
結果を述べる部分では,データが持っている事実としての情報を,短く簡潔に
書く。自分の予期に反した事実も省略しない。また,その事実を述べた上で,結
論を導くための論理展開は,考察の部分に記述する。
 考察を述べる部分では,結果で提示したデータに基づき,明らかにした内容を
主張するように展開する。最初に提起した問題解決に対してどういう貢献がある
のか,その問題を解決したことでもたらされる一般的な(学術的)意義や,今後の
発展性などを記述する。さらに,結果で示したデータのすべてに言及しながら,デ
ータが持つ情報をまとめたキーワードを使用して議論を展開する。データが図表
で表現されている場合は,図表番号を引用した文章を書く。もし,データに不足す
る部分があるなら,その点も明確にしておく。議論を展開するのに適切な文献を
引用したり,参考にしたりして,説得性の高い内容とする。
 なお,原稿の性質から,図や表を用いない場合も考えられる。

8.結論の部分で書くべきこと

 以上の展開にしたがって,明確になった内容,一般的な学術的意義,今後の発
展性や残された課題などについて, 簡潔に(箇条書きで)まとめて書く。章名とし
て,「序論」や「緒論」には「結論」,「序言」や「緒言」には「結言」, 「はじめに」には
「おわりに」が対応する。
 必要に応じて,謝辞を述べる。また,研究費の補助があるのであれば,それにも
言及しておく。これらは「謝辞」という見出し(章番号はつけない)に続けて記述して
もよいが,紙面の節約のためには,結論を述べた後の新段落として,「さいごに,」
に続けて記述するとよい。

9.注

 上述の3.(2)でも述べたが,論理の流れに合わないが,補足的に記述したい
情報がある場合は,無理に本文に入れるのではなく,末尾の注として別に記述
する。本会の会誌では,著者の所属を記載する部分以外は,脚注を使用しない
ことになっている。

10.文献情報・付録など

 引用・参考文献については,原稿書式のテンプレートでもあり執筆要項を示し
ている投稿原稿割付見本(あるいは依頼原稿割付見本)に定められているよう
に記述する。 論文では,過去の成果や先行研究,類似の研究などに触れる必
要があるので,文献情報は必ず必要となる。
 さらに必要に応じて,「付録」や「補遺」などを設けて,本文を補足説明すること
も可能である。

11.もう一つの論文の流れの作り方

 上記の5.〜8.で示した「序論」→「本論」→「結論」という流れでなく,教育心
理系や言語教育系でよく用いられる論文の流れである,「(1) 研究の背景(自身
あるいは他者による先行研究の紹介)」→「(2)研究の目的」→「(3) 研究の方法」
→「(4) 研究の結果」→「(5) 考察」→「(6) 教育的示唆」の書き方も可能である。
 この書き方の場合,「過去→現在(自分の研究)→未来」のように自分の研究を
同じテーマの研究の歴史の時間軸の中に位置付けることで,より大きな枠組みの
中で捉えることを可能にする。したがって,「(3) 研究の方法」が「(4) 研究の結果」
と,「(2) 研究の目的」が「(5) 考察」と,「(1) 研究の背景」が「(6) 教育的示唆」と,
それぞれ対になるように記述することが肝要である。

12.概要(アブストラクト)・キーワードで書くべきこと

 概要は,本文を読まなくても内容の要点が理解できるように記述する。特に
目的,方法,結果についての記述が必要である。
 キーワードには,読者が原稿全体あるいは概要を比較的容易に推測できる
ように,特に関係の深い言葉を適切な数だけ取り上げて記述する。

13.原稿提出前に

 原稿書式のテンプレートでもあり執筆要項を示している投稿原稿割付見本(あ
るいは依頼原稿割付見本)に沿って記述されているか,図の縦軸・横軸のラベル
名や単位が,指示通りに記述されているか,使用する単位や表現が統一されて
いるか,引用・参考文献番号が本文中に指示されているか,図表番号を使った
文章があるか,一文が長すぎないか,図表はページ(段)の上部や下部へ集めら
れているか(読者にとって読みやすくなっているか),字面の白さの観点に留意さ
れているか(一例として「及び」「又」「或いは」ではなく「および」「また」「あるいは」
のように記述する),適切な箇所に読点が打たれているか,誤字脱字がないか,
などについて,時間をおいてから改めて確認してみる。必要に応じて,連名者や
第三者の目を通して意見を求めることで,文字通り異なった観点での指摘が得ら
れることも多い。

参考文献

 1) アメリカ心理学会:APA論文作成マニュアル,前田樹海,江藤裕之,
  田中建彦訳,第2版,医学書院,2011.
 2) 日本心理学会:“論文を書くにあたって(初心者の方へ)”,執筆・投稿の
  手びき,http://www.psych.or.jp/publication/inst/tebiki2005_fixed.pdf#page=51 
  (2011年8月13日参照)
 3) 科学技術情報振興機構:“学術論文の執筆と構成”,科学技術情報流通
  技術基準, http://sist-jst.jp/handbook/sist08_2010/main.htm 
  (2011年8月13日参照)
 4) 日本栄養士会:“執筆のポイント”,「日本栄養士会雑誌(栄養日本)」投稿
  ガイドライン・投稿規程,
  http://www.dietitian.or.jp/jdainfo/pdf/guideline.pdf#page=3
   (2011年8月13日参照)
 5) 日本栄養改善学会:“原稿の構成”,「栄養学雑誌」投稿規程   http://www.jade.dti.ne.jp/~kaizen/journal/pdf/tokokitei_100821.pdf#page=4
  (2011年8月13日参照)
 6) 酒井聡樹:これから論文を書く若者のために 大改訂増補版,共立出版,2011.
 7) 高木六福理科系の論文作法,丸善出版,2003.
 8) 木下是雄:理科系の作文技術,中央公論新社,1981.
 9) 小笠原喜康:大学生のためのレポート・論文術,講談社,2002,
  (講談社現代新書).
10) 浜田麻里・平尾得子・由井紀久子:大学生と留学生のための論文ワークブック,
  くろしお出版,1997.

以上

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